手のひらブログ【ひびろぐ】

いつだって私たちの手のひらには物語がある。

雨上がりは獣の匂い。

雨が降ると憂鬱になる。 雨は悪くないのに。 悪いのは自分。 そんなことはわかっている。 しばらく降り続いた雨がようやく止んだ。 それでも雨は止んだが、灰色の雲に覆われたままでいつまた降り出してもおかしくない。 雨の匂いは残ったまま。 カズキの憂鬱…

いい子といい人。

いい子だね。 父は子を見て言う。 言うこと聞きなさい。 早くごはん食べなさい。 早く寝なさい。 約束守りなさい。 父の言うことを聞いた子に、父はいつも言う。 いい子だね。 子は布団へ向かう。 父から、早く寝なさい、と言われたから。 布団に入ってしば…

頑張っている人に頑張れなんて言えない。

後輩が会社を辞める。 前からわかっていたことだけど、とうとうこの日がやってきた。 実感ないんですよね。 君は言う。 私も同感だ。 毎日のように会って話していた君が、明日からいないのだ。 そんなのいつ感じるのか、わからない。 明日になったら感じるの…

迷惑かけたりかけられたり。

なんだかやたらと混んでいる。 いつもこの時間は、こんなに混むことはないのに。 事故でもあったのかな? 助手席に座る君は、前に並んだテールランプの先を見るように首を伸ばす。 このままだと遅れそうだな。 私は時計に目をやる。 予約しているから大丈夫…

山のように積み重なった想い。

毎日手紙を書いているのに。 あなたからの返事は来ない。 今時、手紙なんて。 そう思うかもしれないけれど、手紙の方が私の気持ちがきちんと届く気がする。 きちんとあなたの家に届いているはずなのに。 どれだけ手紙を書いても。 あなたからの返事は来ない…

いつだって誰かにとって特別な日。

晴れるかな? 雨が降るかな? 良いことあるかな? 悪いことないかな? いつもなら、それくらい。 ほとんとの人にとって今日はそんな日。 でも私にとっては違う。 一年で一番特別な日。 晴れてもいいけど。 雨が降ってもいいけど。 今日が素敵な日になります…

はじまりと終わりの場所。

ちゃぷちゃぷ。 あったかいな。 ここはどこ? 私が誰なのかもわからない。 ただ、ひたすらに落ち着く。 ちゃぷちゃぷ。 あったかいな。 目の前にいるのは誰? それは、いつか、なんとなく知ること。 ちゃぷちゃぷ。 つめたいな。 長靴履いて、水たまり。 深…

傘は町の挿し色。

あなたはいつも暗い色の傘をさすのね。 君が言う。 雨は嫌いじゃない。でも雨降りの町を歩くのは、あまり好きじゃない。 雨空に似た寂しそうな表情の君。 どうして?と君に問いかける。 だってほとんどの人がさしている傘は、暗くて沈んだ色でしょ?それが町…

光を求めると光っていなくても光ってみえる。

明かりが点く度に視線を奪われる。 期待していないふりを自分にしながら、いつでも視界に捉えている。 本当は期待していることに気づかないふりをして。 どうせ、と思い。 まさか、を望む。 明かりが点く度、何度も視線を奪われ何度もからだを揺らす。 音は…

ノロイのヨロイのウレイ。

タカマサは宝箱を見つけた。 ずっと探していた。 苦労して、やっと。 宝箱の中には、鎧が入っていた。 鎧の横に説明書が入っている。 ノロイのヨロイ。 この鎧の名前。 この鎧を身につけると、傷を負わなくなる。 この鎧を一度身につけると、脱ぎ捨てるには…

素晴らしき世界①

時間の価値は人それぞれ。 その時々で人それぞれ。 急いでいる人と、そうじゃない人。 追われている人と、そうじゃない人。 その時、その瞬間で。 様々な人がここに混じっている。 たくさんの人が時間を気にして早歩き。 たくさんの人が時間を気にせず歩いて…

線の内側にお入りください。

線の内側にお入りください。 アナウンスが流れる。 こっちから向こうはダメ。 電車がやってきて危ないから。 誰かが決めた線がある。 超えたら罰が下る。 線の内側にお入りください。 アナウンスが流れる。 こっちから向こうはダメ。 一歩たりとも超えてはダ…

生まれ変わるタイミング。

生まれ変わりたいほどに後悔する。 生まれ変わりたいほどに悲しむ。 生まれ変わりたいほどに無力を感じる。 何も変わらないのは承知で。 なんで私だけ…? いつだってそう思う。 生まれ変われたらいいのに。 いつだってそう思う。 生まれ変わりってあるのかな…

流した涙はすぐに乾く。

泣けないから。 泣いた方がいいって言われても。 泣けないんだからしょうがない。 辛いことを思い出しても。 悲しいことを思い出しても。 目頭は熱くなっても、涙がこぼれることはない。 最後に泣いた記憶はいつだったか。 涙が枯れてしまったのかもしれない…

空気を読む力が手に入れたくて。

空気を読める人になりたいな。 タカシが言う。 なんで? ヒロキはタカシを見つめる。 その方がいろいろといいでしょ? タカシの表情は真剣だ。 そう?空気読むことってそんなに大切かな。 ヒロキは空を見上げる。 大切でしょ!流れというか、雰囲気というか…

時間と欲望と感情。

恋人とケンカして、ひとりでごはんを食べに。 もう別れてやる。 これまで何度も思ったこと。 これまで幾度も誓ったこと。 今回こそは、本気なんだ。 もうあいつとはやっていけない。 我慢することも、気を遣うことも。 あいつのためにすることが、すべてバカ…

この世のほとんどは水でできている。

ヒロミは暗い部屋の中で頭を抱える。 うすい壁の向こうから、雨音が聞こえる。 雨が何かにぶつかる音。 雨の上を車が駆け抜ける音。 ヒロミは心拍数が下がっていくのを感じると、ゆっくりと立ち上がって風呂場へと向かった。 捨てるように服を脱ぐ。 いつも…

回って巡ってやってくる。

春はとうに過ぎた。 過ぎてしまえば、あっという間。 いろんなことを懐かしむ。 遠い昔のことのように。 汗かきながら空を見る。 また春はやってくる、と。 青い春はとうに過ぎた。 過ぎてしまえば、あっという間。 いろんなことを懐かしむ。 遠い昔を思い出…

2択がいちばん迷いがち。

世の中に2択はいろいろある。 好きなものは最初に食べるか最後に食べるか。 ありがちな2択。 言われがちな2択。 なぜ、その2択? 最初か最後にしか食べられない状況になんて、ほとんど出会わないのに。 まあ、いいか。 じゃあ、好きなものがエビフライだとし…

ふたりとみんなとすべての時間。

あとどれくらい? 女性が運転中の男性に訊く。 うーん、あと30分くらいかな。 男性はカーナビを見る。 ちょっと急がないと。 女性はポーチの中身をカチャカチャと音を立てて新たな道具を取り出す。 もっと早く起きていたらこんなに慌てなくていいのに。 男性…

水でささっとだけじゃ物足りない。

水に流す。 きれいさっぱり。 本当はそうしたい。 何もかも。 嫌なことや思い出したくないことを。 どうしても残ってしまう。 水だけではきれいに流せなくて、残ってしまう。 私の中で、嫌な感情が残ってしまう。 それを出さないように、バレないように。 気…

いかなる理由があろうとも。

割り込み禁止。 みんな、順番通り待っているから。 長い長い行列に、みんなきちんと並んでいる。 ルールを守って。 モラルを守って。 そうやって教えられてきたはず。 小さいころから、まわりの大人と呼ばれる人たちに。 ほとんどの人は、順番を守っている。…

相談する前にやるべきことはたくさんある。

あの娘が欲しい。 あの娘じゃわからん。 相談しよう…。 いや、相談しようと思ったけど、やめておく。 君には相談しないことにする。 自分の力でなんとかする。 まだ自分のものにはなっていないけど。 君に相談すると、君のものになる可能性が高まるから。 君…

此処と其処の境目。

ここは日向。 お日様の恵みにからだポカポカ。 そこは日陰。 風が少しだけひんやりからだを通り抜ける。 一歩踏み出すだけで、日向と日陰を行ったり来たり。 長袖シャツをまくったり、おろしたり。 日向でおでこにかいた汗は、日陰で風が吹き抜けるたびに乾…

一度も負けられない戦い。

シノブには誰にも言えないことがある。 どんなに仲の良い友人にも家族にも。 誰かと言わない約束をしたわけではない。 シノブが自分で決めたことだ。 ぼくはヒーロー。 シノブはそう思って、いつも戦っている。 殴りたい。 蹴りたい。 壊したい。 罵りたい。…

釣り日和は釣られ日和でもある。

どこからか糸が垂れてきた。 その先についた針にエサが引っかかっている。 エサの種類は様々。 目につくエサはその時々。 私の気分に合わせて。 私がその時求めているものに合わせて。 わかっている。 ほとんどのエサがトラップ。 何も考えず目の前のエサに…

ポイ捨てとゴミ捨て。

あなたのことを悪く言う人がいる。 ああだこうだ、とあなたのいないところで。 きっとあなたの耳にも届いているのに。 良い気なんてしないのに。 あなたは気にしない素振り。 でも私は知っている。 あなたが誰も知らないところでゴミをまとめて捨ててくれて…

やる気スイッチの形状。

やる気あるのか? オフィスに怒号が響く。 声の主は部長。 オフィスにいる誰もが、またか、と下を向く。 日常茶飯事の怒号。 ターゲットは日によって変わる。 誰もが自分にならないように、ビクビクしている。 やる気あるのか? いつだって部長はこう言う。 …

隠れ家的な、という大人の香り。

久しぶりに会ったヒロキとケンゴ。 居酒屋のテーブルで向き合う。 「本当に久しぶりだな」 「もう、何年になる?」 「楽しかったな、あの頃は」 「そうだな」 何年ぶりかに会うのに、ふたりの距離感はあの頃のまま。 いつもふたりで一緒にいた、あの頃の話で…

しばしのあいだ夢を見る。

眠ろう。 眠っているあいだは自由だから。 起きているあいだより、幾分も。 起きているあいだはいろいろ大変。 不自由しかない。 あんなことやこんなこと。 誰にだって思い当たることはあるでしょう。 だから眠る。 眠たいから眠るのではなく。 自由になるた…