手のひらブログ【ひびろぐ】

いつだって私たちの手のひらには物語がある。

立ち位置はいつでも気になる。

もう夏も終わりだね。 リエは空を見上げる。 そう?まだまだ暑いよ。 タクマは額にかいた汗をぬぐう。 本当に汗っかきだね。 仕方がないだろ。 ほら、肌に当たる陽射しの強さが違うでしょ? 大して変わらないよ。 全然違うよ! まあ、厳密に言えば、毎日違う…

無名も悪名も同じ町にいる。

町を歩けばいろんな花が咲いている。 思ったよりも咲いている。 きっとみんな花が好き。 だからみんな花を植えるんだ。 君もそうだろ? きれいね。 君は色とりどりの花を見て言う。 赤も黄も橙も紫も白も。 何て言う花なのだろう。 俺はどれも名前を知らない…

閉まったものは開ければいい。

シャッター全部閉まってるね。もう閉店の時間なのかな? 斜めに注ぐ陽射しを時折浴びながら、アーケードの下を歩くサユリは冗談っぽく言う。 そんな訳ないだろ。 カズキは少しムッとして答える。 そんなに怒んないでよ。 怒ってねえよ。 明らかに怒ったカズ…

片想いのようで両想い。

鏡よ鏡よ、鏡さん。 何十回、何百回、何千回、何万回と聞いても、あなたは何も言ってくれない。 世界一美しいのは誰? なんて聞きたいわけじゃないのに。 毎朝、毎晩、これまで毎日あなたに聞いてきた。 でも、どれにもあなたは答えてくれない。 あなたに問…

仲間はずれは駄目なこと。

きょうね、ほいくえんでコウタくんがレミちゃんにいじわるしたの。 あら、どうしたの? みんなでブロックであそんでいたら、コウタくんがレミちゃんにだけブロックをかしてあげなかったの。 あらら、ひどいわね。あなたはちゃんと貸してあげたの? うん。ち…

視界は不安定でも感度は良好。

ハローハロー。 今どこにいますか。 ハローハロー。 久しく会っていないですね。 ハローハロー。 応答願います。 ハローハロー。 この声は届いていますか。 ハローハロー。 みんな元気ですか。 ハローハロー。 ちゃんとご飯は食べましたか。 ハローハロー。 …

いくつになっても高校生は高校生。

しっかり捕ってよ。 落ち着いて…。 母が叫ぶ。 ほらーっ。 言わんこっちゃない。 母が天を仰ぐ。 縁もゆかりもない県同士の高校野球。 母は冷房の効いた部屋で観ているだけなのに、汗をかいている。 うるさいな。 私はグラスに麦茶を入れる。 だって心配じゃ…

影を探すことは光を探すこと。

影の長さは私のライフゲージ。 朝は長く伸びてやる気に満ち溢れている。 何色にも染まっていないこれからの時間を、私が染めていく。 なのに。 時間が経つにつれて、ライフゲージはなくなっていく。 あんなに長かったのに、どんどん短くなっていく。 理由は…

未来は思っているよりもすぐそこにある。

ヨウコとケンジは缶ビールを片手にソファに沈み込んでいる。 テレビでは密着番組が流れている。 ふたりにはまったく関係のないジャンルの人物。 それでもふたりは、じっ、と画面を見つめる。 こういうの観ていると、自分もがんばろう、って思えるよね。 コマ…

どっちがお化け?

朝起きたらいつもどおり。 部屋にいてもいつもどおり。 眩しい日差しの下、町を歩けばいつもと違う。 この町はこんなにも大きかったのか。 この道はこんなにも広かったのか。 いつもはあんなに音が溢れているのに。 いつも見かけるあの人はいない。 この町は…

白黒はっきりつけなくてもいい。

大人になるということ。 年齢じゃなく、他のこと。 大人になるということ。 誰かのためじゃなく、自分のために。 自分に嘘ついてまで、大人になりたいなんて思わない。 それでも、いつか勝手に大人になるもんだと思っていた。 年齢だけでいけば、そうなんだ…

飲み込まれる。

飲み込まれていく。 抗うことなく。 むしろ、少しでも早く、と。 順番待ちは、もうそろそろ飽きるころ。 いっそ、楽にしておくれ。 ジワリジワリ、近づいていく。 赤く染まったものが目の前にいくつも流れている。 飲み込まれるように。 吸い込まれるように…

未来はきっと自由自在。

大丈夫、大丈夫。 いろんな人が言ってくれる。 私を気遣って、言ってくれる。 ありがたい。 励まそうとしてくれる。 腐らぬよう転がぬよう、言ってくれる。 ありがたい。 でも何が大丈夫なのかは、教えてはくれない。 本来、人に教えてもらうことではないと…

赤色は大人の色。

コツコツコツ。 あなたはヒールの高い靴を履いて歩いている。 しかもピンヒール。 見ているこっちがドキドキしちゃう。 足をひねらないか。 こけないか。 捻挫しないか。 君はふらつくことなく、真っ直ぐ歩く。 コツコツコツ。 君の足音が響く。 一定のリズ…

何を言われるかより誰に言われるか。

ゴンゾウという男がいた。 この男、どこまでも己の欲望に素直。 自由奔放というか。 自己中心的というか。 自堕落というか。 好きなものを好きなだけ食べ。 好きなときに好きなだけ寝て。 人との約束や予定はいつだってその時の気分次第。 嫌なものは嫌。 好…

素晴らしき世界③

電車に乗った。 座席は満席。 仕方なく立って吊り革につかまる。 両手でつかまり、電車の揺れに体を委ねる。 ドアが開くたび、ぬるい風と人々が出入りする。 さっきまで飲んでいた酒がからだを巡り、一緒に眠気も巡ってくる。 いろいろなものに耐えながら、…

エコなエネルギー補給。

オーライ、オーライ。 バックオーライ。 ストーップ! いらっしゃいませ!今日は何にしますか? 若くて元気な店員が駆け寄ってくる。 レギュラー満タンで。 タクミは窓を開けながら言う。 はい!いつもありがとうございます!では、これを。 店員はそう言う…

見えているものは真実のごく一部。

この世にあなただけのものなんてない。 買ったものでも。 貰ったものでも。 注文したものでも。 座った席でも。 住んでいるところも、食べているものも、着ているものも。 あなたのものかもしれないけれど、あなただけのものではない。 思ったことも、感じる…

時期外れの春は誰にでもある。

思春期っていつなんだろ? チエが目を細めて言う。 さあ?人それぞれじゃない? 隣を歩くサトルも目を細める。 尖った陽射しがふたりを突き刺す。 あちこちからセミの鳴き声が聞こえるが、あちこちすぎてどこにいるのかわからない。 思春期だったらこの暑さ…

八月六日。

目の前に広がるのは、色のないモノクロな世界。 何度も見たことがあるのに、何度も見ても私の想像が追い付かない。 どれほどの年月を重ねても。 どれほどの爆音が降り注いでも。 あちこちから流れ着く、泣き声しか聞こえない。 どれも小さく、星の数ほどある…

振り返ってみれば自ずと見える。

男らしく。 女らしく。 あなたらしく。 自分らしく。 らしく、って何? らしくしなさい。 誰かに言われたところで。 自分でもわかっていないのに。 どうすればいいのか、わかるはずもない。 らしく、って何だろう。 考えれば考えるほど、わからなくなる。 考…

海は急に深くなる。

酒は飲んでも飲まれるな。 そんなことを真顔で言う人は、きっと本当の恋をしたことがないのね。 君はお酒を飲みながらそんなことを言う。 どれだけ飲んだらダメになるか。 どれだけ依存したらダメになるか。 どれだけ想っても届かないものもある。 そんな経…

何もせずにいることをする。

何もせずにいられたらいいのに。 何もしていないのに汗をかく。 もうそんな季節。 挨拶代わりの、暑いね、がそこらじゅうに転がっている。 踏んでしまうと、こっちまで、暑いね、と言ってしまう。 何もせずにいられたら。 何もせずにいても汗をかくのなら。 …

大きなことは小さなことの集合体。

コンビニ行ってくる。 リョウスケは静かにドアを閉めた。 ルミは何も答えず、床に寝そべった。 だるくて夕食作る気が起きない。 リョウスケがコンビニに行く前にルミはそう言った。 じゃあ何か食べに行く? リョウスケはルミに言う。 動きたくない。 わかっ…

癒えた傷でも痕は残る。

なくしたときは何も思わなくて。 なくした後になくなったのだと実感する。 それを後悔と呼ぶのなら。 なくさないようにするために。 なくした時のことを考えて。 なくさないために何ができるのか考える。 それを想像と呼ぶのなら。 目の前のことが目の前じゃ…

熱を帯びた夜。

熱を帯びた夜。 からだじゅうが熱い。 からだの外も中も。 アイスコーヒーを飲んで水分補給。 今夜だけはブラック。 眠れない夜はこれから。 眠らない夜はこれから。 冷房つけても熱はひかない。 からだをいろいろ動かしているから。 こんなに熱を帯びている…

「おとな」と「こども」は3文字違い。

大人と子供の線引きはどこ? 子供のころはずっと思っていた。 大人っていいな。 大人になってからはずっと思っている。 子供っていいな。 これから手に入るもの。 これまで手に入れていたもの。 ないものねだり。 今はないのだと自覚したら、それが答え。 大…

違った美味しさがそこにはある。

ピザって美味しいよね。 出来立てはもちろん、冷めたピザをレンジで温め直しても美味しいよね。 同じピザでも少し違った味を楽しめる。 たくさん頼みすぎちゃって。 余ったとしても、また次の日に食べられる。 あなたもそうでしょ? ふたりして頼み過ぎちゃ…

火花は消えても記憶は残る。

今日は花火大会。 毎年欠かさずあなたと見に行った。 このあたりでは有名な花火大会。 大きな打ち上げ花火がいくつも上がる。 いつだってたくさんの人がやってくる。 人混みが苦手なあなただけど、この花火大会だけは必ず一緒に行ってくれた。 小さいころか…

昔ながらの王道ど真ん中。

餃子を食べたい。 がっつりした餃子。 匂いがしないとか、女性でも気にせずとか。 そういうのではなく、がっつりした餃子。 あなたは気にするかしら。 餃子の匂いをさせた私を。 あなたは嫌かしら。 餃子の匂いをさせた私とキスするのが。 でもよく考えてみ…