雑文記【ひびろぐ】

いつだって私たちの手のひらには物語がある。

イヤホン、片っぽ、秘め事。

なにを聴いているの? イヤホンつけて、君はなにを聴いているの? 近くに寄っても聞こえない。 音漏れしていないから、なにも聞こえない。 君がなにを聴いて、なにを思うのか。 ぼくにはわからない。 知りたいと願う。 わかりたいと願う。 イヤホン片方貸し…

気遣い、言葉遣い、お使い。

あなたは言葉遣いが悪い。 そんなことはわかっていたけど。 どうしようもなく我慢できないときもある。 それをあなたに伝える。 そんなこと前からわかっていただろ。 あなたはぶっきらぼうに言う。 言葉遣いがどうのこうのと言っている場合じゃない気がして…

短所、反面、長所。

飽きっぽい。 君の短所らしい。 君の彼女が言っていた。 どんなこともすぐに彼は飽きてしまうの。真っ当に続いた試しがない。 君の彼女は、そう言う。 彼は、という表現がなんだか憎らしかった。 そんなこと、言えるはずもないけれど。 彼女にとっては君の飽…

誠実な人が好きだから。

誠実な人が好きだから。 誠実な人が好きなのに。 妻子持ちを好きになった。 彼は誠実だから。 私のことを受け入れてくれた。 彼は私に誠実で。 きっと彼の家族にも誠実。 職場に着けば、まず彼のネクタイの色をチェックする。 会える日は、青。 会えない日は…

穴場のパワースポットは私だけの秘密。

誰も知らないパワースポットへ向かう。 穴場のパワースポット。 有名なところは誰もが知っている。 有名なところはパワースポットも大変。 いろんな人にパワーを与えないといけないから。 神社やお寺を素通りする。 なんだか大きくて丸い石も素通りする。 そ…

熱の伝わり方と感じ方。

温もりが伝わらない。 君が差し出してくれた手のひらも。 思いやりも。 君を抱きしめたからだも。 やさしさも。 私自身が絶縁体のように。 なにも温もりが伝わってこない。 冷えた空気に馴染むように同化する。 澄んだ空は手を伸ばしても届かない。 吐く息は…

世の中ラブソングで溢れているけれど。

心に残る歌詞なんて書けない。 本当に思ったことを伝えるには勇気が必要。 綺麗な言葉ばかりじゃないから。 言葉に表せないこともある。 心に響くメロディーなんて思い浮かばない。 キャッチ―なもの。 繊細さと大胆さを併せ持った複雑なコードなんて。 頭の…

未知との遭遇。

音楽を聴きながら笑う君。 何を聴いているの? そう言ってイヤホンを片方借りた。 聞いたことのない曲。 笑っていられるような歌詞ではない。 なのに、君は笑っている。 私の知らない音楽はたくさんあって。 私が知らない感情もまだまだある。 知っているつ…

小さい方がいい、の方がいい?

やさしいから。 女が言う。 俺、やさしいの? 男が首をかしげる。 うん。 俺、自分勝手にやってるだけだから。それに合わせてくれる君の方がやさしいと思うけど。 そんなことないよ。あなたはやさしい。私はそこが、好きなの。 ふうん。まあ、君がそう思うな…

好きな季節と好きじゃない季節。

朝晩冷えてきましたが、お体の調子はいかがですか? 雲は薄く、空は高く。 陽が沈むのは早くなり、陽が昇るのは遅くなりました。 夜が長くなったのです。 あなたに会えない夜が。 あなたに会える時間が減っていくのです。 私が夏を好きな理由はそれ。 私が冬…

君の素敵な髪飾り。

君はいつも素敵な髪飾りをしている。 長くてきれいな髪に。 髪をほどいた君を見たことはないけれど。 想像してみる。 髪をほどいた君を。 髪飾りが光る。 君によく似合っている。 素敵なデザイン。 どこで買ったのか。 いくらくらいしたのか。 そんな下世話…

墓場まで持っていく秘密。

私が知って悲しむのなら、墓場まで黙っていてほしい。 君は小さく笑う。 そんなことを言いながら、本当は全部知りたいんでしょ? なんて返そうものなら、すべてが台無し。 言えば、きっと君は怒るから。 それに。 きっと君は本当に知りたくないんだ。 私に隠…

やさしさの方向音痴。

あなたは人を傷つけたくないと言う。 やさしいね。 あなたは人を泣かせたくないと言う。 やさしいね。 あなたは人を傷つけるくらいなら自分を傷つける。 あなたは人を泣かせるくらいなら自分が泣く。 そんなのちっとも、やさしくなんかない。 あなたは何もわ…

夏の最後。最後の夏。

もう夏も終わりだから、花火でもやろうか。 君はそう言った。 コンビニへと寄って花火を買う。 けっこう残っている。 もう夏も終わりだ。 そう言いながらも、コンビニは涼しくていいね、なんて言って笑う。 君はスマホばかりいじっていて、何も答えてくれな…

閉まったものは開ければいい。

シャッター全部閉まってるね。もう閉店の時間なのかな? 斜めに注ぐ陽射しを時折浴びながら、アーケードの下を歩くサユリは冗談っぽく言う。 そんな訳ないだろ。 カズキは少しムッとして答える。 そんなに怒んないでよ。 怒ってねえよ。 明らかに怒ったカズ…

未来は思っているよりもすぐそこにある。

ヨウコとケンジは缶ビールを片手にソファに沈み込んでいる。 テレビでは密着番組が流れている。 ふたりにはまったく関係のないジャンルの人物。 それでもふたりは、じっ、と画面を見つめる。 こういうの観ていると、自分もがんばろう、って思えるよね。 コマ…

何を言われるかより誰に言われるか。

ゴンゾウという男がいた。 この男、どこまでも己の欲望に素直。 自由奔放というか。 自己中心的というか。 自堕落というか。 好きなものを好きなだけ食べ。 好きなときに好きなだけ寝て。 人との約束や予定はいつだってその時の気分次第。 嫌なものは嫌。 好…

時期外れの春は誰にでもある。

思春期っていつなんだろ? チエが目を細めて言う。 さあ?人それぞれじゃない? 隣を歩くサトルも目を細める。 尖った陽射しがふたりを突き刺す。 あちこちからセミの鳴き声が聞こえるが、あちこちすぎてどこにいるのかわからない。 思春期だったらこの暑さ…

大きなことは小さなことの集合体。

コンビニ行ってくる。 リョウスケは静かにドアを閉めた。 ルミは何も答えず、床に寝そべった。 だるくて夕食作る気が起きない。 リョウスケがコンビニに行く前にルミはそう言った。 じゃあ何か食べに行く? リョウスケはルミに言う。 動きたくない。 わかっ…

癒えた傷でも痕は残る。

なくしたときは何も思わなくて。 なくした後になくなったのだと実感する。 それを後悔と呼ぶのなら。 なくさないようにするために。 なくした時のことを考えて。 なくさないために何ができるのか考える。 それを想像と呼ぶのなら。 目の前のことが目の前じゃ…

熱を帯びた夜。

熱を帯びた夜。 からだじゅうが熱い。 からだの外も中も。 アイスコーヒーを飲んで水分補給。 今夜だけはブラック。 眠れない夜はこれから。 眠らない夜はこれから。 冷房つけても熱はひかない。 からだをいろいろ動かしているから。 こんなに熱を帯びている…

火花は消えても記憶は残る。

今日は花火大会。 毎年欠かさずあなたと見に行った。 このあたりでは有名な花火大会。 大きな打ち上げ花火がいくつも上がる。 いつだってたくさんの人がやってくる。 人混みが苦手なあなただけど、この花火大会だけは必ず一緒に行ってくれた。 小さいころか…

過程も査定に入れてほしい。

どれだけ力を入れても開かない。 君が持ってきた瓶。 君が持ってきた瓶のふたが開かない。 これ開けてもらっていい?硬くて…。 君がそう言ったら、男としての魅せどころ。 しょうがないな感を出して、瓶を受け取る。 そこまではよかったけれど。 ある程度の…

町と君が眠るあいだ。

遠くから電車の音が聞こえる。 線路沿いにある安いワンルームに寝っ転がっていると、からだに響く。 終電じゃなく始発。 隣では君が寝息をたてている。 電車が走る音に合わせるように、妙にシンクロしている。 君はここにいるべき人じゃないよ。 無責任に言…

画面の向こうは別世界。

嫌なニュースばかりだな。 ヒロキはテレビを眺めながら言う。 そうだね。見ているだけで痛々しい。 ミサはヒロキの隣で頷く。 考えられないよな!まわりは気づかないのかな。 ヒロキは次第にヒートアップする。 ……どうだろう。 ミサはなにかを飲み込むように…

人類最古の病にかかる。

からだの至るところで異変が起こっている。 なにか重大な病なのかもしれない。 怖い。 だから、いろんな病院を回ってみる。 まずは内科。 時々、胸のあたりがチクッとする。 最近はその頻度が高まっている。 特に異常は見当たりません。 医者はそう言う。 お…

誰をも騙せる嘘はない。

演じるなんて嘘つきのやることだ。 あなたは言う。 誰だって演じている部分はあると思うけど。 私の言葉にあなたが頷くことはない。 そんなことないよ。 橙に染まった町の片隅をあなたは歩く。 伸びた影はあなた自身よりも長くなっている。 演じることが悪い…

百見は一触にしかず。

今までは見ているだけだったから。 肩に触れる。 手に触れる。 あなたがどんどん近づいてくる。 あなたにどんどん近づいていく。 触れるたびに近づいていく。 物理的にも精神的にも。 まつ毛に触れる。 思っていたよりも長いのね。 鼻に触れる。 思っていた…

とんがり君とへこんだちゃん。

へこみにへこんで、原型がわからなくなるくらいへこんでいる。 あなたはそれに気づいているのか、いないのか。 いつもどおり接してくる。 いつだってあなたはそうだけど。 ポジティブな言葉ばかり並べて、お気楽な言葉ばかり並べて。 あなたはとんがって見え…

理想論の論破を恐れる。

駐車場を探す。 いいところがないかな、とグルグル回る。 いいところを見つけた、と思ったら満車。 こんないいところ、なかなか空くわけもなく、またグルグル回る。 君の部屋から少しずつ離れていく。 仕方がない。 君が住むマンションに駐車場はない。 だっ…