ひびろぐ

いつだって私たちの手のひらには物語がある。

いつか雨はやむけど今やんでほしい。

雨が降るたび寒くなる。 ただでさえ、寒くなってきたのに。 家を出てすぐに、雨が降ってきた。 傘は持っていない。 曇ってはいたけれど、降りそうにはなかったのに。 なにも当てにはできない。 私の勘なんて、そんなもの。 買ったばかりの薄手のコートなんて…

信じてないけど信じたい話。

流れ星に願い事を3回言うと願いが叶う。 そんな話、誰もが知っている。 でも誰もが、信じていない。 ほら。 誰も星なんて見ていない。 こんな明るい夜空に、星なんて数えるくらい。 夜空よりも星よりも明るいものに誰もが夢中。 願い事がそこにはないことを…

いつもと違う姿に惹かれ見つめる。

こっちからすれば本番前。 まだまだ準備中。 本番前にちらりと顔見世。 なんだか、裏側覗いているみたいで気持ちが昂る。 今からが本番。 夜の帳が下りてからがあなたの出番。 帳が下りてからが本番だなんて。 なんだか滑稽。 夜になったらカーテン閉めるの…

ヘクトパスカル、って早口で言えると気持ちいい。

毎週、台風来るね。 娘がテレビを観ながら言う。 今回のはデカそうだな。 父が娘の隣に座る。 910ヘクトパスカルだって。 昔は、ヘクトパスカル、っていう単位じゃなかったのにな。 そうなの? ああ。たしか、ミリバール、だった気がする。 なにが違うの? …

この世の7割は水でできている。

一生懸命に泳ぐ。 波をかき分け。 必死に泳ぐ。 泳ぐのは苦手だけど。 笑いながら。 どんなに苦しくても。 押す波も寄る波も。 身を委ねるだけではダメ。 それじゃあ、ダメなんだ。 何度もこれだと思った。 何度も勘違いだったと気づいた。 一生懸命に泳ぐ。…

立ち位置はいつでも気になる。

もう夏も終わりだね。 リエは空を見上げる。 そう?まだまだ暑いよ。 タクマは額にかいた汗をぬぐう。 本当に汗っかきだね。 仕方がないだろ。 ほら、肌に当たる陽射しの強さが違うでしょ? 大して変わらないよ。 全然違うよ! まあ、厳密に言えば、毎日違う…

影を探すことは光を探すこと。

影の長さは私のライフゲージ。 朝は長く伸びてやる気に満ち溢れている。 何色にも染まっていないこれからの時間を、私が染めていく。 なのに。 時間が経つにつれて、ライフゲージはなくなっていく。 あんなに長かったのに、どんどん短くなっていく。 理由は…

海は急に深くなる。

酒は飲んでも飲まれるな。 そんなことを真顔で言う人は、きっと本当の恋をしたことがないのね。 君はお酒を飲みながらそんなことを言う。 どれだけ飲んだらダメになるか。 どれだけ依存したらダメになるか。 どれだけ想っても届かないものもある。 そんな経…

町が少しだけ明るくなるとき。

きれいな花が咲く。 色も形もそれぞれ。 少しだけ、世の中が明るくなった気がする。 いつもは、晴れ時々雨。 でもこの時期は、雨時々晴れ。 みんな一斉に感謝する。 お日様のありがたみを、この時期は。 もう少ししたら、また、お日様をうらめしく思うのに。…

雨上がりは獣の匂い。

雨が降ると憂鬱になる。 雨は悪くないのに。 悪いのは自分。 そんなことはわかっている。 しばらく降り続いた雨がようやく止んだ。 それでも雨は止んだが、灰色の雲に覆われたままでいつまた降り出してもおかしくない。 雨の匂いは残ったまま。 カズキの憂鬱…

此処と其処の境目。

ここは日向。 お日様の恵みにからだポカポカ。 そこは日陰。 風が少しだけひんやりからだを通り抜ける。 一歩踏み出すだけで、日向と日陰を行ったり来たり。 長袖シャツをまくったり、おろしたり。 日向でおでこにかいた汗は、日陰で風が吹き抜けるたびに乾…

何を作っているのでしょうか?

煙突から白い煙がモクモク。 その先には空が広がっていて、大きくて白い雲がある。 遠くから見ると、煙突の先と雲がつながっている。 まるで雲を作っているみたいに。 モクモク、モクモク。 煙は絶えることなく出続ける。 雲はどんどん大きくなる。 白かった…

行くも戻るもいつも自由。

分かれ道に出た。 右は平坦な道。 左は急な上り坂。 どっちを選ぼう。 どっちに行きたいのか。 上り坂は疲れそうだから平坦な道を選ぶ。 しばらく歩く。 平坦な道を。 何もない。 所々にきれいな花が咲いているだけ。 たくさんの人をすれ違うだけ。 上り坂は…

星座にまつわる神話は独特。

死んだら星になりたい。 なんて、ロマンティックなことは言えない。 でも考えてみたことはある。 なぜ星になりたいのか。 きっと寂しいからだ。 あなたと離ればなれになってしまうから、何か繋がりがほしいんだ。 星になったらどうなるのだろう。 ちょっとだ…

明かりの下には影がある。

川の向こう側に広がる空がとても綺麗で。 川の向こう側を照らす明かりがとても綺麗で。 どうしてこっちはそうでもないのかと不思議に思う。 向こうとこっちはそれほど離れていないのに。 助手席に乗る知人が言う。 「そんなものはただの幻想だわ」 幻想なん…

どこで咲いても花は花。

道を歩いていたら、小さな花が咲いていた。 アスファルトのはしっこに白い花が。 ひび割れたアスファルトの隙間から、一輪の花が咲いていた。 私はこの小さく美しい花の名前を知らない。 アスファルトの隙間を縫うように咲いたのか。 アスファルトを突き破っ…

いつも向かい風、時々追い風。

今日は風が強い。 冷たさを多分に含んだ風が襲ってくる。 からだを硬直させて風が止むのを待っていたら、視界のはしっこで何かが動いた。 その正体は、ビニール袋、だった。 コンビニのビニール袋。 弁当を買ったときに入れてくれる、茶色いビニール袋。 強…

見えないものを見る力。

月が見えるころに家を出て、月が見えるころに家へと帰る。 頑張っていると錯覚する。 月はいつだってあそこにいるのに。 見えない時間があるだけで、いつだってあそこにいるのに。 見えているか見えていないかの違い。 ただそれだけ。 厳密に言えば、昼でも…