ひびろぐ

いつだって私たちの手のひらには物語がある。

いつも向かい風、時々追い風。

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今日は風が強い。

冷たさを多分に含んだ風が襲ってくる。

 

からだを硬直させて風が止むのを待っていたら、視界のはしっこで何かが動いた。

 

その正体は、ビニール袋、だった。

コンビニのビニール袋。

弁当を買ったときに入れてくれる、茶色いビニール袋。

 

強く冷たい風と絶え間なく走り去る車たちが巻き起こす風が重なり、ビニール袋は宙をふらふらしている。

 

いつ地面に落ちるのだろう、と思いながらしばし眺める。

 

しかし、いつまで経っても落ちてこない。

私は自転車から降りて手で押していく。

 

少しずつ流されていくビニール袋を追う。

どこに落ちるのか、確かめるために。

 

わかってる。

私がしている行動の意味を。

 

そう。

無意味、だと。

 

それでも、気になったものはしょうがない。

きっと誰もが気になるはず。

気にはしなくても、目で追うくらいはするはず。

 

舞い上がったビニール袋を。

 

いつもは私だってこんなことはしない。

でも今日はなぜか結末が気になる。

幸いなのかそうじゃないのか。

今、私は何にも追われていない。

そう。

暇なんだ。

 

急に上がったり下がったり。速くなったり止まったように見えたり。

ビニール袋の動きに合わせて、私も自転車を押す。

 

風は止まない。

車は信号の関係でいたり、いなかったり。

 

ビニール袋は風に身を委ね、ふらふらひらひらぱさぱさばさばさ、宙を舞う。

次第に高度が下がってくる。

もう少しだ。

もう少しで決着がつく。

 

落ちた。

とうとう落ちた。

 

車道のど真ん中に、落ちた。

 

何台もの車に踏まれる。

かさっかさっ、とそのたび音をたてて。

 

横移動はするが、再び舞い上がることはない。

車に踏まれ続け、風に流され、少しずつ移動している。

 

風が強くなったり弱くなったり。

それでもビニール袋が再び舞い上がることはない。

 

でも、きっと、ずっとそこにいることはないのだろう。

またどこかへ出かけていくのだろう。

 

誰かが拾ってゴミ箱へ捨てられない限り。

 

私は自転車にまたがる。

ビニール袋は車道のど真ん中で音をたてたまま。

風は強く冷たいまま。

 

重たいペダルを力いっぱい踏み込む。

いちにっ、いちっにっ、と力を入れて。

 

どっちに漕いでも向かい風だから。

 

だから時折やってくる追い風が、嬉しくて心地良い。