物語ブログ【ひびろぐ】

いつだって私たちの手のひらには物語がある。

母の日が年に一度では少なすぎる。

f:id:touou:20190327213142j:plain

 

 

手が冷たい人って心が温かい、って聞いた。

 

わたしの手はどうなのだろう。

自分じゃよくわからない。

いろんなところをペタペタ触る。

 

「こらっ、何してるの!」

おかあさんに叱られた。

いつも叱られてばかり。

 

わたしの手が温かいか調べただけなのに。

 

「ちゃんと片付けたの?」

おかあさんに叱られた。

また叱られた。

 

遊んでいたけど、急に調べたくなっただけなのに。

どうせまた後で遊ぶし。

 

おかあさんはいつも怒っている。

きっといつも忙しいからだ。

 

ごはん作ったり。

洗濯したり。

掃除したり。

 

おかあさんはいつも忙しそう。

 

食器洗ったり。

買い物行ったり。

洗濯物をたたんだり。

 

おかあさんはいつも最後。

 

わたしのことが終わってから。

おとうさんのことが終わってから。

ようやく、おかあさんの番。

 

わたしはおかあさんの好きな食べ物を知らない。

 

わたしの好きな食べ物はもちろん知っている。

おとうさんの好きな食べ物も知っている。

だっていつもおかあさんが作ってくれるから。

でも、おかあさんの好きな食べ物は、知らない。

 

「わたしの手は冷たい?」

おかあさんの手を握って訊いてみる。

 

「あったかいよ」

おかあさんは嬉しそうに答える。

 

わたしは全然、嬉しくない。

 

だって、手が冷たい人って心が温かい、って聞いたから。

 

だって、おかあさんの手はこんなに冷たいのに。

 

だから温める。

せめて手だけでも。

わたしの手でおかあさんの手を温めてあげる。

 

大きくなったらわたしもおかあさんみたいな手になれるかな。

おかあさんみたいな温かい心になれるかな。

 

おかあさんの手を、ギュッ、と握る。

 

わたしの手が冷たくなるように。

おかあさんの手が温かくなるように。