物語ブログ【ひびろぐ】

いつだって私たちの手のひらには物語がある。

いつまで経っても届かない人。

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見上げるばかりの肩に、ようやく並びかけたころ。

あなたの隣によく並んでいた。

 

あなたの肩と並べたら、どんな景色が見えるのか知りたくて。

 

毎日、毎日、隣に並んだ。

毎日、毎日、あなたとの肩の距離を測っていた。

 

あとどれくらいで並べられるか。

あとどのくらい経てば並べられるのか。

 

距離が近づけば近づくほど、あなたの横に並ぶ回数が増えた。

近づくのが嬉しくて。

 

私の肩はどんどんあなたの肩に近づいていく。

並ぶのは時間の問題。

 

毎日、毎日、肩を並べた。

あと少し。

もう少し。

 

そして、とうとう、肩を並べた日がやってきた。

 

さいころから夢見た日。

 

もっと感動すると思っていた。

 

肩を並べた日。

私は感動しなかった。

 

思っていたのとは、違ったから。

 

それから、私はあなたの隣に並ばなくなった。

あなたと距離を取るようになった。

 

それから一度も肩を並べたことはない。

 

だってあなたは卑怯だから。

 

肩を並べてから数年後。

あなたは手を伸ばしても届かないところへ行ってしまった。

 

肩が並んだ日は、何も感動しなかった。

こんなものかと思った。

これまでと大して変わらない。

期待が大きかった分、落胆も大きかった。

 

でも今は違う。

あれから私はまだ背が伸びた。

あなたの肩よりずっと上に私の肩がある。

 

それでも、あのころとは違う。

肩を並べることはできたけれど、ただそれだけだった。

 

期待していた景色は、いくら背が伸びても見えることはなかった。

 

それなのに、私は勝手に期待して落胆した。

どこかであなたのせいにしていた。

 

あなたが見ていた景色を、私も見たかったから。

 

あなたは卑怯だから。

 

ようやくわかったころには、あなたはもう手の届かないところへ行ってしまった。

 

あなたがいなくなってから、さらに数年。

私は少しだけあなたが見ていた景色を見ることができるようになった。

 

でも、あなたはいない。

 

もっと肩を並べて歩きたかった。

もっと肩を並べて話したかった。

もっと肩を並べて聞いてみたかった。

 

もう私の背は伸びないのに。

仮に伸びたとしても。

どれだけ背が伸びたとしても。

あなたは手を伸ばしても届かないところへ行ってしまったから。

 

見ようとせずに見えなかったあのころに。

あなたの隣に並んでいたあのころに。

あなたと肩を並べたあのころに。

 

少しだけ見えるようになった今は、少しだけ戻りたいと願う。

 

もう少しだけ話をしたかった、と。