手のひらブログ【ひびろぐ】

いつだって私たちの手のひらには物語がある。

余白がないと身動き取れなくなる。

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充電しすぎると逆にダメなんだって。

アヤは言う。

 

充電しっぱなしだと逆に充電の減りが早くなるんだって。

トモヤはアヤの言葉に、へえ、とだけ言って、充電しながらスマホを触っている。

 

聞いてる?

アヤは口を尖らせる。

 

うん。

トモヤはアヤの方を見ないまま答える。

 

充電がなくなってから充電した方が長持ちするんだって。

トモヤはアヤの言葉に、うん、と答えたトモヤの指が止まることはなかった。

 

いつからこうなったのだろう。

アヤは横目でトモヤを見る。

 

 

 

トモヤと同棲しはじめて半年。

このままずっと一緒にいるのかな、なんて思うこともある。

 

順番が違う、って言われるかもしれないけど。

このまま一緒にいて、新たな命を授かって。

 

それでもいいやと思える自分がいた。

 

同棲をはじめたころは、確かにそうだった。

 

毎日いつも一緒で、いつも充電100%。

そんな日々が続いた。

 

でも今は…。

 

 

 

誰かが言っていた。

充電しすぎると充電の減りが早くなる、って。

 

少しくらい充電しなくても大丈夫なのに。

100%に慣れちゃうと、少し減っただけで不安になる。

 

充電しすぎて減りが早くなる。

たっぷりあった充電は、いつの間にかすぐに減る。

 

80%や70%ならまだ余裕がある。

 

50%になると、そわそわしはじめる。

少しずつカウントダウンがはじまる。

 

40%、30%、20%……。

 

本格的なカウントダウン。

そわそわ、不安ばかり。

すぐに充電したくなる。

 

充電が100%に慣れ過ぎて。

10%でも100%でも変わりないのに、すぐに不安になる。

 

充電のことばかり考えて。

先のことばかり考えて。

残りのことばかり考えて。

 

 

 

トモヤの指は相変わらず動いたまま。

もちろん充電はしたまま。

 

アヤはトモヤの充電器をスマホから抜く。

 

何?

トモヤは不満気に言う。

 

今日は疲れたから晩ごはんは外食にしよう。

アヤは言う。

 

えー、面倒くさいよ。

トモヤはそれでも指を止めない。

 

トモヤのおごりね。

アヤはそう言うと、トモヤの手からスマホを取り上げる。

 

えー、なんで?

トモヤはようやくアヤを見る。

 

ごはん食べながら教えてあげる。あっ、スマホは家に置いていってね。私のも置いていくから。

 

えー、とトモヤが言う前にアヤはテーブルの上にふたりのスマホを置く。

 

充電もなし。帰ってきたら充電しよ!たまにはいいでしょ。

 

……。

トモヤは恨めしそうにテーブルの上に置かれたスマホを見つめる。

 

充電なくなる前には帰るから。ねっ?

 

アヤは笑いながらトモヤの手をひいた。