物語ブログ【ひびろぐ】

いつだって私たちの手のひらには物語がある。

キセキノミズ。

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若い男女が歩いている。

 

陽射しはすっかり夏。

ギラギラ輝いている。

 

若い男女はそんな中、手をつないで歩いている。

笑い合って歩いている。

 

ふたりがつないだ手のあいだには汗がじっとり。

それでもふたりは笑ったまま、手を離さない。

 

ふたりの手のあいだから、一滴の汗がポトリと滴り落ちた。

 

汗が落ちたそこに、小さな芽が生えた。

ふたりは気づかず歩いていく。

 

小さな芽はギラギラ輝く陽射しを浴びて、どんどん大きくなった。

どんどん、どんどん。

 

若い男女が再び同じところを通るころには、天を突き刺すほどに大きくなっていた。

 

若い男女は大きな木を見上げ、愛を誓った。

 

大きな木はさらに大きくなる。

どんどん、どんどん。

 

男は大きな木の枝を一本切り取る。

その枝で男は家を建てた。

 

ギコギコ、トントン、カンカンカン。

 

枝一本で大きな家ができた。

大きな大きな木のそばに、大きな家ができた。

 

男女はそこに住み、やがてふたりは新たな命を授かった。

 

おぎゃあ、おぎゃあ。

元気に泣く赤ちゃん。

 

ふたりは笑う。

 

おぎゃあ、おぎゃあ。

元気すぎていつまでも泣いている。

 

男と女は心配そうに赤ちゃんを見る。

大丈夫かな?

大丈夫でしょ。

 

ふたりは泣いてばかりの赤ちゃんが心配で、涙を一滴ずつこぼした。

 

その涙は赤ちゃんの両頬に当たった。

 

すると赤ちゃんは泣き止み、大きく笑った。

男女もそれを見て、大きく笑う。

 

三人は大きな大きな木のそばでいつまでも暮らした。

 

大きな家の中で、みんな大きく笑いながら。