手のひらブログ【ひびろぐ】

いつだって私たちの手のひらには物語がある。

時間と欲望と感情。

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恋人とケンカして、ひとりでごはんを食べに。

 

もう別れてやる。

 

これまで何度も思ったこと。

これまで幾度も誓ったこと。

 

今回こそは、本気なんだ。

 

もうあいつとはやっていけない。

 

我慢することも、気を遣うことも。

あいつのためにすることが、すべてバカらしく思える。

 

こんな日は。

やけ酒にやけ食い。

 

あいつは関係ない。

あいつなんて関係ない。

 

私のため。

私がそうするって決めただけ。

 

賑わう店内。

カウンターでひとりお酒を飲み、ごはんを食べる。

 

賑わう店内。

どこの席からも楽しそうな声。

 

私の席では、食器と咀嚼の音しか聞こえない。

 

賑わう店内。

多くの人の笑い声が響く。

その中で、ほんのりBGMが流れ聞こえてくる。

 

少し前に流行った懐かしいメロディー。

 

聴いたことのある曲。

歌詞までわかる曲。

サビだけ知っている曲。

 

そして。

あいつとよく聴いていた曲。

 

その曲が流れたとき、店内が少しだけ静かになった気がした。

 

BGMに合わせて、小さく口ずさむ。

 

手元にあるグラスを空にする。

もう飲めない。

 

お待たせいたしました!

店員さんの威勢の良い声と共に、料理が一皿。

もうお腹いっぱい。

注文しすぎた。

 

出てきたものは、あいつの好きな料理。

 

大きく息を吐き出す。

流れるBGMはクライマックスを迎える。

 

その気はないのに。

あいつとの思い出が巡る。

あいつが巡る。

 

店内では次の曲が流れはじめた。

また、あいつとよく聴いていた曲が。

 

曲が終わると同時に、店員さんを呼ぶ。

 

これってお持ち帰りできますか?