ひびろぐ

いつだって私たちの手のひらには物語がある。

空気を読む力が手に入れたくて。

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空気を読める人になりたいな。

タカシが言う。

 

なんで?

ヒロキはタカシを見つめる。

 

その方がいろいろといいでしょ?

タカシの表情は真剣だ。

 

そう?空気読むことってそんなに大切かな。

ヒロキは空を見上げる。

 

大切でしょ!流れというか、雰囲気というか。目に見えるようで見えない何かを感じる力って大切でしょ!

タカシは熱っぽく語る。

 

そんなに熱くなるほど重要かな?

ヒロキは再び空を見上げる。

 

重要!

なんで?            

えっ?

どうしてそんな重要なの?

 

…いろいろだよ。空気読めた方が、いろいろといいだろ?

タカシの声が小さくなる。

 

まあな。その方がモテるしな。

ヒロキは横目でタカシを見る。

 

まあ……それもある。とにかく!ヒロキは俺と一緒で空気が読めないタイプなんだから、読めるようにならないといけないんだ。

 

ふうん、そうかな。

ヒロキは空を見上げる。

 

なんでさっきから空見てんの?

タカシもヒロキにつられて空を見上げる。

 

明日デートだからさ。晴れるかな、って思って。

 

天気予報見ればいいじゃん。

 

それだと面白くないだろ?空見て空気読んで自分でわかったほうがいいだろ?

 

なんだそれ。

 

そうだ!タカシ、空気読める人になりたいんだろ?

 

ああ。

 

じゃあ、明日の天気教えてよ。

 

はあ?

 

空気を読める人っていうのは、きっと空気の流れが読める人なんだ。タカシも言ってただろ?目に見えるようで見えない何かが見える人が空気を読める人って。

 

まあ…。

 

だったら天気くらい読めなきゃ。練習だよ、空気読む練習。

ヒロキはタカシと空を交互に見る。

 

……わかったよ。

タカシは人差し指を舐めて、宙にかざす。目を閉じたり開けたり、見える限りの空を見渡しながら。

 

……わからん。

タカシは舐めた人差し指をズボンで拭く。

 

俺も。

ヒロキは人差し指を突き出し、タカシと同じポーズを取っていた。

 

空気なんて読めねえよ。

 

読めねえな。

 

ふたりは笑い、試しにもう一度人差し指を舐めた。