ひびろぐ

いつだって私たちの手のひらには物語がある。

傘は町の挿し色。

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あなたはいつも暗い色の傘をさすのね。

君が言う。

 

雨は嫌いじゃない。でも雨降りの町を歩くのは、あまり好きじゃない。

雨空に似た寂しそうな表情の君。

 

どうして?と君に問いかける。

 

だってほとんどの人がさしている傘は、暗くて沈んだ色でしょ?それが町にたくさん並んでいるだけで気分が沈むから。

 

君は私が手に持った、黒い傘に目をやる。

 

じゃあ、せめて、透明のビニール傘にしようかな。

そう言って、君の様子を伺う。

 

まあ、暗い色の傘よりかはいいけれど。そしたら、今度は服に気をつけなくちゃ。

 

服?

 

そう。透明の傘だと服の色が見えやすいでしょ?それに、雨降りの日にお気に入りの服を着る人は少ないの。

 

うん。

 

お気に入りの服って、明るい色である傾向が高いの。白も含めて。

 

町を見渡すと、たしかに、そう見えなくもない。

 

雨降りだとみんな気分が沈みがちでしょ?なのに町は傘や服で溢れて、余計に気分が沈んちゃう。誰だって毎日お気に入りの服を着たい。でも、濡れちゃったり汚れちゃったりするのが嫌だから、雨の日は暗い色になりがちなの。

 

なるほど、と思えるような、思えないような理論を君は差し出してくる。

 

服を新しく買うのもいいけれど、明るい傘を一本持っていた方が楽だし、安上がりでしょ?だから、みんなが明るい色の傘をさせばいい。

 

みんながそうすれば、世の中もう少しだけ明るくなると思わない?

 

君はそう言って、虹色の傘を広げた。