ひびろぐ

いつだって私たちの手のひらには物語がある。

迷惑かけたりかけられたり。

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なんだかやたらと混んでいる。

 

いつもこの時間は、こんなに混むことはないのに。

 

事故でもあったのかな?

助手席に座る君は、前に並んだテールランプの先を見るように首を伸ばす。

 

このままだと遅れそうだな。

私は時計に目をやる。

 

予約しているから大丈夫じゃない?

 

もう少しこのままだったら、お店に遅れる連絡しなくちゃ。

 

車は少しずつしか進まない。

テールランプが少しずつ濃くなる。

 

せっかく予約したのに…。

私はシートにもたれかかる。

 

仕方ないよ。

君もシートにもたれかかる。

 

でも、予約取るの大変だったんだよ。

口を尖らせ、ゆっくりアクセルを踏む。

 

少しずつ車は進む。

しばらく進むと、看板が見えてきた。

 

ご迷惑をおかけします。

 

工事中だ。

一車線丸ごと止めているから、それは混む。

 

これか…。

私はため息を吐く。

予約の時間まではギリギリ。

 

こんな時間にこんなところで工事なんてしないでほしいよ。

私は時計に目をやる。

ここを過ぎれば渋滞が終わる。予約の時間まではギリギリだ。

 

まあ、仕方ないよ。

君は助手席で笑う。

 

工事しないと困る人はきっとたくさんいるだろうし。ご迷惑おかけします、って看板に書いてあるし。ちょっとくらい遅れても大丈夫。連絡すればいいんだから。

君は看板を見ながら、笑う。

 

今日は結婚記念日。

 

君がずっと行きたがっていたお店。

ようやく取れた予約。

奮発した私は、笑っている君を見る。

 

これからもご迷惑をおかけします。

ハンドルを握ったまま、頭を下げる。

 

えっ?これからも?

君は怒った口調で、笑って言う。

 

私も笑う。

アクセルを踏む。

 

安全運転で急いで、店へと向かう。