物語ブログ【ひびろぐ】

いつだって私たちの手のひらには物語がある。

探しているのは必然か奇跡か。

f:id:touou:20190621202230j:plain

 

マナミは町を歩くたび、探してしまう。

 

黒くて大きな車を。

 

町にはいくらでもいる。

でも、どれも違う。

 

町にはいくらでもいるから。

そのたび、目で追ってしまう。

 

マナミは信号待ちのたび、探してしまう。

 

目の前をいくつも通り過ぎる、黒くて大きな車を。

 

すぐ近くはもちろん、遠くにいる車にも視線を送る。

運転席も助手席も。

後部座席は外から見えなかったから諦める。

 

でも大丈夫。

 

ナンバーはちゃんと覚えている。

 

彼の誕生日。

そんなベタなことをすることが好きな人だった。

 

マナミはクラクションが響くたび、探してしまう。

 

自分を呼んでいるのではないかと。

久しぶり、なんて笑いながら。

 

黒くて大きな車。

町にはいくらでもある。

 

ナンバーはちゃんと覚えている。

車種はよく知らない。

 

彼の顔はしっかり覚えている。

笑った顔もそうじゃない顔も。

今はどこでなにをしているのかは知らない。

 

黒くて大きな車。

特別でもなんでもない、どこにでも売っている市販車。

 

でも、違う。

 

どの黒くて大きな車にも、彼は乗っていない。

 

マナミは探してしまう。

 

いつでも黒くて大きな車を探してしまう。

いつでも彼を探してしまう。