ひびろぐ

いつだって私たちの手のひらには物語がある。

タイプは違えど私のタイプ。

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タレ派?

リノはメニューを開いてケンに言う。

 

うん?まあ。

ケンは嫌な流れを感じる。

 

やっぱり焼き鳥には塩でしょ!

リノはケンが注文したものと同じものを、塩で注文する。

 

塩で食う奴はみんなそう言うんだ。塩で食べるのが通、みたいな。塩で食べる方が上、みたいな感じで。

ケンはメニューを閉じる。

 

でも、塩の方が美味しいよ。

リノもメニューを閉じる。

 

好みによるだろ。どこにだってタレと塩があるわけだし。それに大体、タレの方が先に書いてあるだろ?

 

ここは塩の方が先だよ。

 

そういうこと。

 

どういうこと?

 

好き好きってこと。

 

ふうん。ねえ、天ぷらは?

リノは運ばれてきたビールをケンと乾杯して飲む。

 

天つゆだろ。

ケンもビールを飲む。

 

私は塩。

 

ほら出た。

 

なにが?

 

ちょっと上から来るだろ?

 

そんなことないよ。

 

リノはあれだろ?焼肉のときは塩とかわさびで食べるタイプだろ?

 

うん。

 

ほらな。俺はがっつりタレで食うぞ。

 

まあ、そういうタイプだからいいんじゃない。じゃあ、ざるそばは?

 

ざるそば?ざるそばってつゆ以外にほかに何かある?

 

つゆにたっぷりつけるでしょ?

 

うん。

 

私は先っちょに少しだけつけるの。

 

なんだそれ。

 

タイプっていう話でしょ。

 

ああ、そうだ。タイプに上も下もない。通だかなんだか知らないけど、食べ方に上も下も通もそうじゃないも、なにもない!

ケンが声を荒げると同時に、店員が焼き鳥を持ってくる。

 

なにムキになってるの?好き好きってケンが言ったのよ?

リノは小さく笑う。

 

なんか納得がいかないんだよね。

ケンは口を尖らせる。

 

でも私は、なにを食べるかより誰と食べるかを重視するタイプだよ。

リノは焼き鳥を一本くわえる。

もちろん、塩だ。

 

なにそれ?

ケンは焼き鳥に手を伸ばす。

 

私は、好きでもない人とふたりきりで食事なんかしないタイプだって言ってんの。

リノは串に半分残った塩の焼き鳥をケンの方へ差し出す。

 

うん?うん、ああ、そう…。

ケンは差し出された焼き鳥に口を伸ばす。

 

……美味いね。

 

そうでしょ?

 

ケンは美味しそうに焼き鳥を食べるリノの口元を、ばれないようにチラチラ見つめた。