物語ブログ【ひびろぐ】

いつだって私たちの手のひらには物語がある。

運転しないと車に酔いがち。

 

f:id:touou:20190901193631j:plain

 

助手席って酔いやすいんだよね。

リクは窓を開ける。

 

わかる。私もそう。

ハンドルを両手でしっかり握りながらマオは頷く。

 

運転替わってよ。

 

やだ。

うねる山道をふたりが乗った車が通っていく。

 

酔い止め薬、一応買っておいたけど飲む?

マオはダッシュボードを指差す。

 

あったの?

 

山道通るから、念のため。

 

もう遅いよ。

 

そうね。ごめん、すっかり忘れてた。

車は右へ左へ、また右へ。

普段だとなかなかお目にかかれない、急なカーブがいくつもある。

 

なんかで読んだけど、運転しているときと同じ動きをしたら酔いにくいんだって。

マオはハンドルを切る。

 

同じ動き?

リクは揺れるからだを押さえる。

 

そっちだと遠心力がかかって、右に曲がると左に、左に曲がると右にからだが持っていかれるでしょ?

 

うん。

 

だから運転しているときと同じ方向にからだを預けるといいらしいよ。

 

へえ。やってみるわ。

リクは曲がりくねった道が続く中、曲がる方へとからだを必死に傾け、自然の力に抗い続ける。

 

…しんどい、これ。

リクは背もたれにからだを持っていき、自然の力に身を委ねる。

 

じゃあ、遠くを見ていたほうがいいよ。

 

遠く?

 

近くばかり見ていたら酔いやすいんだって。

 

へえ。

リクは窓の外を見る。

代わり映えしない景色がずっと続く。

山道なんて、そんなものだ。

 

しんどい、これ。

 

しんどくはないでしょ。

 

飽きた。それに…。

 

それに?

 

遠くばかり見ていたら、マオのことが見れなくなるだろ?

リクはマオを見つめる。

 

気持ち悪っ。

マオは笑いながらアクセルを緩める。

 

酔い止め飲む?

リクはダッシュボードを開けるふりをする。

 

もう少しで山道抜けるから。

マオはふたたびハンドルを切った。